2015年08月12日

春、仙台に越してきた父が大事にしているものに、父の姉の遺影がある。


彼女は18歳の若さで亡くなった。写真の中で微笑むセーラー服の彼女は、とても美しい。時代は太平洋戦争の只中。彼女の命を奪ったのは、結核だった。


先日、父はその遺影写真立ての額を新調しようと裏蓋をあけた。と、古い紙切れがパラッと落ちたという。その紙切れを、今日用事で父の元へ立ち寄ったときに見せられた。


四辺には七十数年の時のシミがあった。真ん中に描かれていたのはなんと、父が子供の頃に描いた侍だった。多分、雑誌か何かの活劇挿絵を模写したものだ。


「姉が亡くなった時は尋常小学校だったべ。その頃の絵だな。年が離れててな、姉には随分と可愛がってもらったっけな」


描いた時は、姉の没年から逆算すると、今でいう小学低学年だという。その上手さに驚いた。


それにしても、なぜ遺影の裏に仕込まれていたのだろう?


十八歳という若さで、桜が見たい、と、春を待たずに亡くなったという彼女。その彼女がずっと写真だての中で守り続けていた幼き父の絵。

だれが写真立てに忍ばせたのか、今となってはすでにわからないと父は言った。


とまれ、描くことが大好きだった幼き父がいて、そんな父が大好きだった姉が居た。


時が過ぎ、「彼女」今、「老いた弟」に何かを伝えたいんじゃないか。父に描けと言っているんじゃないか。


口をへの字に結んで刀を持つ侍の絵を見て、そう思った。9B18DF03-E241-4784-91CC-02B634E4B965.jpg



posted by タク at 02:07| 宮城 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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