2017年03月11日

荒れ地で描く

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夜半、気がつけば今、仙台の闇に雪がふっている。そういえば、六年前のあの日も、雪が猛烈にふっていた。

自分にとっての6年前の3月11日・東日本大震災。
水彩画個展を数日後に控えていた自分は、あらかたの個展作品は額装を終え、雑務とイラストの納期に追われていたことを思い出す。
案件は忘れもしないJR東日本の車内誌、トランベールの青森ローカル線紀行の水彩イラストだった。トランベールのイラストは、以前からやってみたい仕事だった。縁あって仕事が舞い込み、3月11日はその受注第一回目の「納期」だった。
締め切りは夕方だった。絵は午前中に仕上がっていた。昼過ぎに原画データを大容量送信サービスで送り、ほっと一息。寝室でベッドに横になっていた時、揺れがきた。
二階にある仕事場はドアが開かないほどかき回されていた。その現場を見た時、「ああ、午前中にデータ納品しておいて良かった」と思ったことも思い出す。

その瞬間から、「さあ、仕事が無くなるぞ=ギャラが入らないってことだ。どうやって米を買う?」という日々がはじまった。受注仕事=イラスト仕事がなければ、フリーランスはバンザイお手上げだ。ひたすら絵の展示をして買ってもらうしかない。きれいごとは効かない。
奇しくも揺れた日から4日後の3月15日から予定されていた個展の内容は、三陸を描いた絵が大半をしめていた。家とは別の場所に保管していた額作品は、大きな揺れの中、落ちることなく、まるで出番をまっているようだった。
それを知った開催画廊のマネージャーの決心で、余震の続く中、個展を決行。(開催ではない。決行だ。だって、津波で流されてしまった風景をずらりとラインナップしていたのだ。場所は仙台だ。家族を亡くした方や家を流された方だってたくさんいるのだ。石を投げられても当然だった)

「アーティストに何ができるか?」なんてマスコミがのちによく取りあげていたけど、そんなこと考えている余裕は正直なかった。「絵が描けなくなりました」という声も何度も聞いた。その気持ちは痛いほどわかった。でも、描くことしかできない自分が描けなくなったら、結果は自ずと「ジ・エンド」だ。
被災地のだれもが必死。ならば、家もあり家族も無事、紙も絵の具もあった自分は、ただ、ぎりぎりがしがしと食う為に描く。
数ヶ月は彩度の低い色しか出せなくなった。それでも、行動が答えだ、そう思って何でも描いた。描きたいテーマがみつかれば、ガソリン代を工面して追いかけていった。実は、拙著「子規と歩いた宮城」は、その結果だったりする。本の中には書いていないけれど、当時の取材の記憶は、まるで粒子の荒い戦時中のフィルム映像のような印象だ。

今、思いめぐらしてみると、走っている間はまったくきがつかなかったけれど、2011年3月11日はあきらかにひとつの境界線になっている。
この六年、描くことで人様から生きる糧をいただけたことは奇跡的だった。
311はある意味、最果てだった。
自分の事務所の屋号は「ランズエンド」。訳すなら「地の果て」だ。

新幹線に乗り、旅の情報誌「トランベール」を手に取るたびに、あの日を思い出す。
311という荒れ地の最果てから、ここまで旅がつづけられていることに、感謝します。それが今の気持ちです。

絵は「ある日の七ヶ浜」です。震災前に取材していた鉛筆スケッチに、震災のあと、色付けした一枚です。
posted by タク at 00:59| 宮城 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | モノヅクリの裏庭 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月09日

仕事の信頼

イギリス_ハンチングの男_ドローイング_古山.jpg

確定申告が近づいてきました。
「何でも自分でやろうとするな、金払って頼めることは頼め」
とはよく言われることです。もっともだなあ、と思います。

小さいながらもギャラリー・アトリエアルティオを構えてから、仕入れ、維持費等で出入りが少々煩雑になって来ました。なので昨年から税理士さんにしっかとお願いするようになりました。
かれこれ十数年、ウチの申告の最終チェックをしてくれていた税理士さんなので、まかせて安心です。
しかし、それは、税理士さんに私どもが、どうやって社会と関わっているかを、しっかり理解してもらっているから。恥ずかしいところまで知っていてくれます(笑)
何事も、信頼の積み重ねのうえで、どん!と頼めるようになるのだな、と我が身を振り返る時期なのであります。

そういえば、「何でも自分でやろうとするな、金払って頼めることは頼め」を他の「あること」で実践したら、頼んだ相手のスキルがひどかった、、、なんてこともあります。これはめちゃくちゃ痛い。
一昔前とくらべて、やりとりがメールだけ、仕事内容もブラックボックス化、頼んだのはいいけど、仕事している人の顔も見えない、、、なんて場合は,要注意。頼む相手は大きな会社だからいい、というものではないようです。

ウェブで便利になった反面、信頼をおもんぱかることが難しくなってきたように思えます。
信頼できるかどうか、結局は「直感」なのかもね。

先日、はじめて仕事をご一緒したグラフィックデザイナーさんが、わざわざ個展に来てくれました。
若いけれど、とてもいいデザインをする方でした。
その仕事はメールと電話だけですすんだのですが、直感的に「おぬし、やるな」。
会場でリアルに初ご対面。雑談することでさらに安心感が深まり、「オヌシヤルナ」感もフィックス。

仕事ではウェブの波の中に生きていますが、人間、リアルが一番大切なのだな、とあらためて思った次第です。
久しぶりにいい仕事師に出会えました。

絵はイギリスコッツウォルズの町で見かけた職人さん。
信頼感を絵にしたような風貌でした。








posted by タク at 10:26| 宮城 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 水彩画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月06日

19本の絵筆

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やむなく店を畳んだという和筆屋さんの筆を、縁あって譲り受けました。本数にして19本。

和筆ですが、自分の描くときの気持ちに驚くほどついてきてくれる。
まるで生きているようで、作られた職人さんの矜持を感じます。
いや、間違いなく命が宿っているのだと思う。
なんなんだ、この筆たちは…。

お持ちくださったのは、以前とあるグループ展にいらしたお客様。
「わけあって私のところに筆がごっそりとやってきましてねぇ、、、筆を使う仕事の方に分けていたんですよ。」
あまりのボリュームに固辞しましたが、是非にとの言葉に負け(正直、ほしかったのです、、、)譲ってもらったのでした。

ありがとうございます。大切に使わせていただきます。

posted by タク at 18:48| 宮城 | Comment(0) | TrackBack(0) | 水彩画 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

『みる!岩手県岩手郡岩手町』展開催

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【ホールの小さな展覧会】コレクションによるテーマ展『みる!岩手県岩手郡岩手町』展開催のおしらせ。

「岩手町立石神の丘美術館」における、私の収蔵作品も含めた企画展のお知らせです。同館は一昨年,私の水彩画による展覧会を開催した美術館ですが、今回の企画展では、同館収蔵作品=岩手町を描いた水彩風景画7点が展示されています。
以下、ご案内です。

会期:3月4日(土)〜4月9日(日)
会場:岩手町立石上の丘美術館 ホール ※入場無料
   〒028-4307 岩手県岩手郡岩手町五日市10-121-21
電話 0195-65-7453

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posted by タク at 16:29| 宮城 | Comment(0) | TrackBack(0) | 美術展 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年03月02日

ヒキ強し日

6FB47DE7-8FDC-42E1-B40D-F68CF130B338.jpg仕事の取材で、盛岡日帰り出張でした。

しかし、盛岡の女性はめんごい美人が多い。「南部美人」とは言ったものです。そう感じるのは自分にも南部DNAが連なっている所以か??キョロキョロする自分にそう言い聞かせたりして(笑)
盛岡は、我が愛しき故郷でもありますから、仕方ないねー、なんてね。
今日もたっくさんの美人さんと岩手山がにこやかーに、迎えてくれました^ - ^^ - ^^ - ^

さて、仕事の予定滞在時間は2時間ほどと、ちと厳しいスケジュール。取材対象は歴史建造物。現地ではクロッキーのみ。ザクザクと鉛筆スケッチしていると、肩をポン!と叩かれた。
振り返ると友達が!!
「似てると思ったけど拓ちゃんじゃんか!」
びっくりなんてもんじゃない。お互いに「何してるんだよー!こんなとこで!」と肩を叩き合ってた。

モチーフの建物の、中も見たいと思っていたのですが、一般は入れそうにない。まあ、仕方ないな…と思っていたら、彼が「オレが中を案内してやるよ!」
うーん、ありえない展開だぞ。でも現実。
きくとその建造物を管轄している大元に、彼の仕事場はあったのです。

結果、予定滞在時間を一時間オーバー。
でもね、これは神様がくれた一時間だね。そんな最高の盛岡でした。

夕刻仙台にもどり、アトリエアルティオへ。途中、ヤマト屋書店に立ち寄ると、手がけた絵本「あなたの一日が世界を変える」と挿絵カットを描いた「どこまでも生きぬいて」が、並んで平置きになっていました。
書店の方の粋な計らい、としか思えない配置…。うーん、すごいなヤマト屋書店。ありがたいなヤマト屋書店。心底Thankxです。

そんな、ありえないことが立て続けにあった日でした。

絵本はアルティオでも好評発売中です^ - ^と、ちょっとだけ広告♩ぜひどうぞ。



posted by タク at 00:33| 宮城 ☁| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする